今年、359杯目!
今年、石神さん一押しのお店。2006年4月オープン。いわゆるトムヤムクン・ラーメンで勝負するお店!
渋谷界隈にこんなすごいラーメン屋があったとは… 石神本の影響か,土曜日の昼下がりなのに店内は満員状態。店内は簡素で綺麗で厨房がかなり広い。だがそれ以上にコワモテの店主の存在がキラリと光る。服装もかなりキメててかっこいい。キンキラのネックレスがぎらりと光る。
メニューは一切書いてない。どうやって注文するかは行ってからのお楽しみ。かなり個性的なオーダーシステムになっている。ズバリメニューは(今日現在)赤と黒と白の三種。来店一回目は赤しか食べられない。というか,一番標準の赤を食べてもらいたいという店主の願いが込められている。つまり赤を最初に味わってもらいたいという店主の粋な計らいなのだ。まずそこに感動した。
赤(1000円)ライス付き(タイ米?!)
まずそのビジュアルにショック。左手前にレモン,右手奥に一輪の花,底の深い黒い器,彩り鮮やかなラーメン,まさにビジュアル系なラーメンなのだ。だが,ショックなのは見た目だけではなかった。僕はかなりどぎついスパイシーなタイ風ラーメンをイメージしていた。海外でいろんな強烈な食べ物を経験しているので,何でも来い!という覚悟で食べた。
そしたら,なんと!!普通に超美味いのだ!アジアンテイストのスパイシーな味が際だつけれど,日本人の舌に馴染むやわらかい味わいなのだ。トムヤムベーストやナンプラーやパクチーといったアジアンのスパイスと和のテイストがマッチしているというか… 酸味,辛み,渋み,甘み,あらゆる味わいが波のようによせては消える(同じことを石神氏も述べている)。にんじん,もやし,セロリ,ネギ,メンマ,団子のようなもの,そしてスープの底に眠る挽き肉。一杯のラーメンなのに,フルコース料理を食べている気分になった!
さらにさらに!コワモテ店主だけど,一人一人を大切にする丁寧な接客(このギャップが非常に印象的)。食べるエンターテイメントとしてもかなりのパフォーマンスだ。あらゆる面で完成された新星の登場だ!
藤巻激場
東京都世田谷区池尻3−19−5
03−5481−5838
不定休(でも、原則、土日もやってます)
石神さんのレポはこちら
さらに⇒⇒
追加情報
10月末から,100円の入場料(店内維持料?)を取るとのこと。ラーメンの値上げではなく,店内の維持のためのサービス料みたいなものらしい。ラーメンの値上げにしないところが潔く感じる。
⇒
ひとこと
石神さんは、自身の本で、次のような意味深なことを述べている。
「今回は『藤巻激場』が飛び抜けてますね。まぁ店主の藤巻さんは料理人歴が長いから、他の新店と比べるのは無理がありますが。あれを食べて、キワモノとか風変わりなエスニックラーメンとしか感じられない人は料理を認識するセンスがないと思うから、食べ物については語らない方がいい」(『石神秀幸選定本物のラーメン』、2006、p.2)
最初、この文章を読んだとき、どういう意味でこう言ったのか分からなかった。正直、なんでそこまで言うんだろう?と思った。けれど、石神師匠の言葉なだけに、軽はずみな発言ではないと感じた。
で、今日、藤巻激場の赤を食べて、自分なりに石神さんの言葉の意味を理解することができた。これは、非常に的確でもっともなことのように思えてきた。
ここのラーメンを、「キワモノ」、「風変わりなエスニックラーメン」と見なす人、そういう人は、ある固定された味に囚われた人だという前提を理解しておかなければならない。よく海外に行った人で、海外の味覚に対応できず、食べるものがなく苦しむ人がいる。日本国内の味付けだけにしか対応できない人はたしかにいる。とりわけ、塩や味噌や醤油やダシの味しか美味しいと感じない人もいる。唐辛子さえダメな人も多い。そういう人は、それでいいと思う。趣味嗜好というのはどうにもならない部分はたしかにある。
だけど、料理を語るのであれば、自分自身の趣味嗜好とは切り離して考えなければならない。「美味しいか不味いか」なら、誰でも言える。だけど、どんな食材が使われていて、どんな工夫がなされているのか、といったことは、趣味嗜好のレベルを超えて、対象そのものへと向かうことである。料理について語るのであれば、趣味嗜好といった主観的で単純な判断は中止しておかなければならない。大切なのは、読み手がそのラーメンを生き生きと思い描けるような言葉を使って語る、ということである。
石神師匠の発言を僕なりに理解するとすれば、狭いドメスティックな味にしか興味がない人間は、ただ食べておけばいい、世界にはありとあらゆる調味料やスパイスがある、それぞれの調味料やスパイスにそれぞれの使い道があり、それぞれの良さがある、それを分からないなら、料理について語らない方がいい、そう言っているように思うのだ。
自分の趣味嗜好に照らし合わせて、良い/悪いを判断するのではなく、対象であるラーメンそのものの方から、良い/悪いを判断すべきだ、そう言っているようにも思える。藤巻激場は、たしかにラーメンそのものとして、非常に豊かなものであった。考え抜かれた一杯であった。これを、こちら側のフレームで美味いか不味いか判断するのではなく、ラーメンという基準の方から、つまり対象の側から、判断する方が賢明だろう。
僕も世界の料理を色々と食べ歩いてきたが、それぞれの国に特徴的なスパイスや調味料がある。イタリアの友人に作ってもらったレモンライスなんていうのは、ただただびっくりするしかなかった。アメリカの友人に作ってもらったアメリカの田舎料理もすごい味だった(トマトベースの肉のベースト)。スペインのパエリアも、場所によっては非常にきつい。トルコ料理のケバブなんていうのも、結構独特で、食べ手を選んでいる。ロシアのボルシチだって、フランスのブイヤベースも、結構独特だ。アジア各国の料理は、さらにその上をいく。インドの本場のカレーの中には、とうてい食べられないようなすごい匂いのものもある。ココナッツもかなり強烈だ。ドイツでアフリカ料理の専門店にも行った事がある。アフリカの米は、かなり個性的な食感で、かずのこのようにブツブツしている。
このように、世界には、それぞれその国の風土にあった料理やスパイスがある。それは、その国の文化であり、決して外から否定されるようなものではない。どこかの国の食べ物を否定するということは、その国そのものを批判することと同じなのである。
そう考えてみると、藤巻激場を批判するということは、ずっとずっと前から脈々と伝承されているタイの文化を否定することになる。ナンプラーであれ、パクチーであれ、それらは、すべてより美味しく食べるための人間の叡智なのだ。
こういった意味で、石神氏は上の発言をしたのだ、と理解した。
合っているかどうかは、わからないが、少なくとも、僕自身、彼の発言から、色んなことを学ぶことができた。さすが師匠です!









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